http://www.be.emb-japan.go.jp/japanese/aboutus_j/ten060515.html
『大使館eニュース(2006年5月15日号)
◆◆海外危険情報のお知らせ◆◆
フランドル地域で人種差別凶悪犯罪が多発
最近、フランドル地域で人種差別を発端とする凶悪犯罪が多発しています。以下は、5月11日にアントワープで発生した銃殺事件に関する当地報道の概要です。
5月11日昼頃、アントワープの観光中心街(Zwartzustersstraat)で、極右思想を有する18歳のベルギー人男性が非白人系の移民に対して突然発砲するという事件が起きました。これによって住み込みのベビーシッターをしながら当地に滞在していたアフリカ系女性が即死し、その連れの2歳のベルギー人幼児も犠牲となりました。また、同時にトルコ系の女性一名が重傷を負っています。この後、同容疑者は警察に腹部を打たれ、現在、病院に収容されています。
同容疑者は、蘭語系極右政党(Vlaams Belang)に所属するFrieda Van Themsche下院議員の甥に当たる人物で、同容疑者自身も極右思想を崇拝していたと考えられています。この発砲事件は人種差別によって引き起こされた悲劇と見られていますが、Vlaams Belangの党首は、同容疑者は同政党の党員ではないとして関与を否定しています。
当地では5月6日にも、ブルージュで、スキンヘッド集団による暴行事件が発生しました。スキンヘッド集団の溜まり場となっている同市のカフェ付近を偶然歩いていた男性2名(パリ在住のアフリカ系移民と、その連れであるベルギー人男性)が突然スキンヘッド集団によって囲まれ、殴打されて重傷を負いました。アフリカ系男性の方は、現在も意識不明の状態です。
更に、5月11日、先日から行方不明になっていた23歳のモロッコ系男性がスヘルデ川から遺体で発見されました。目撃証言によれば、この男性は白人男性に後をつけられ、争った末にスヘルデ川へ投げ込まれた可能性があるとのことです。コルトレイク近郊のフーレ市では、モロッコ系移民家族が住む住居が放火されるという事件も起きました。両事件とも、人種差別を動機とする犯行の疑いが強いと考えられています。
引き続く人種差別凶悪犯罪に対して、ヴェルホフスタット首相は、「このような嫌悪すべき卑怯な殺人は、度を越した人種差別の表れである。極右思想が何をもたらすかは、今、誰の目にも明らかである。」という声明を発表しました。同様に、アントワープのヤンセン市長も極右思想を激しく非難する発言を行っています。
ブルージュでは5月12日、暴力と人種差別反対を唱えるデモが行われました。4月14日には、ブリュッセルで、17歳のベルギー人学生がポーランド人の若者によってMP3プレイヤーを狙われた末に刺殺されるという事件が起き、これを受けて約8万人の市民が暴力反対を訴えてデモ行進を行ったばかりです。これ以降、警察では、市民の安全確保が最優先事項であることを再確認し、治安強化の体制がとられています。』