西田利の日記

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奇跡の子

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071201-00000010-maip-int
バングラデシュ 「奇跡の子」…20キロ以上漂流し助かる
12月1日16時51分配信 毎日新聞

 村人らに「奇跡の子」と呼ばれる少年がいる。オバイドゥル君(7)。超大型サイクロン「シドル」の直撃を受けたバングラデシュ南部の島で高波にさらわれ、海を約20キロ以上も漂流した後、救出された。だが一緒に流され、救出直前まで守ってくれた母ハリマベガムさん(30)は遺体で見つかった。今後は、助かった兄とともに、「サイクロン孤児」としての過酷な人生が待っている。【コラガシア島(バングラディシュ南部)で草野和彦】

 ベンガル湾に浮かぶコラガシア島。なだらかな草地が広がる島内のあちこちで、島民らが破壊された自宅を再建し始めていた。オバイドゥル君一家の家があった場所には、他人の家の骨組みが建ち始めた。

 一家は3年前から、漁業シーズンの11〜5月の間、島の仮住居で生活していた。母は漁師から仕入れた魚をさばく仕事で、兄弟と長女ルビナちゃん(6)を養った。

 オバイドゥル君はとつとつと当時の状況を語った。11月15日夜、突然高波が襲ってきた。流される自分の右手を母がつかんだ。記憶にあるのは暗闇と冷たい水、うなる風。一度だけ黒い球体が見えた。2人はこれにつかまって浮かんでいたらしい。

 数時間後、北東にある別の島の海岸近くまできた。母が語りかけた。「あなたは陸に向かいなさい」。最後に聞いた言葉だった。母は力尽きたのか、オバイドゥル君の後を追って上陸することはなかった。

 海岸で眠っていたところを見つけた島民が、病院に連れていってくれた。その後「女性の遺体が海岸で見つかった」との知らせを受けた。母だった。自分の上陸地点から約50メートルしか離れていなかった。コラガシア島の住民約70人の遺体が、同じ海岸に漂着した。

 兄のザイドル君(12)はコラガシア島内の木につかまり助かった。だが、途中で握っていた手が離れた妹は、今も行方不明のままだ。

 首都ダッカに住んでいた8年前、父が蒸発した。ザイドル君の脳裏に浮かぶのは「いつも笑っていて、働き者の母」だ。故郷に戻った母が近所の人の仕事を手伝い、食べ物をもらってきてくれたことをよく覚えている。

 兄弟は今、母の故郷ガブア村の伯母(35)宅に身を寄せる。8人家族の伯母方でも、細々と作っていた米と野菜がサイクロンで全滅した。伯母は「あの子たちに十分な食べ物を与えることができない」と涙にくれる。

 今後のことを尋ねると、ザイドル君は「日雇いの仕事をしようかな」。オバイドゥル君は「早く大きくならないと。それから何をするかを考える」とだけ答えた。

 ココナッツの大きな葉で覆われた母の墓の前で、時折、兄弟は祈っている。「神様、母をずっと天国にいさせてください」と。

最終更新:12月1日16時51分』