西田利の日記

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蚊帳

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080826-00000002-dol-bus_all
米TIME誌も「世界一クール」と絶賛!アフリカで売れまくる住友化学の“蚊帳”
8月26日9時0分配信 ダイヤモンド・オンライン

 植民地と宗主国の関係にあった歴史的経緯からアフリカ各地に多くの拠点や情報網を持つ欧州の企業と比べて、日本企業のアフリカ進出は遅れている。そんななかで、着実にアフリカでの存在感を上げているのは住友化学だ。

 その原動力となっているのが、マラリアを媒介する蚊から身を守るために、防虫剤を練りこんだ同社の蚊帳「オリセットネット」である。

 世界で毎年5億人がマラリアを発症し、100万人以上が命を落としているとされるが、その約9割はアフリカのサハラ砂漠以南の地域、サブサハラで発生している。

 防虫剤のスローリリースができるオリセットネットは、洗濯しながら5年間の使用に耐えるとあって、マラリア対策向けに需要が一気に拡大。2004年には、米タイム誌の「世界で一番クールな技術」にも選ばれた。現地企業と合弁企業で進出しているタンザニアでの生産量は、年間1000万張りに達している。

 住友化学では、蚊帳事業はもっぱら「社会貢献が目的」(米倉弘昌社長)と考えている。だが、主な購入先となっている国際機関からは、適正な利益は確保するよう要請されている。というのも、事業継続ができなければ、蚊帳の供給も止まってしまうからだ。

 そのため、住友化学では「いったん上がった利益は学校建設などの形で、再度地域に還元することにしている」(米倉社長)という。

 じつは蚊帳事業から生まれる社会貢献は、それだけではない。

アフリカは現金収入がある職が極めて限られた地域だが、住友化学タンザニアの工場では、「直接雇用だけで3200人、運送や補修など周辺ビジネスも考えれば3〜4倍の雇用を生み出している」(米倉社長)という。

 現地では、一人の従業員の現金収入で一家を養っていることも珍しくないというから、工場一つで、数万人規模の生活を支えていることになる。

 今年5月、住友化学はナイジェリアに年間2000万張を生産する新たな蚊帳工場の建設を決定した。ナイジェリアはサブサハラ全体の約2割に相当する1億4000万人の人口を持つ国で、オリセットネットへの高いニーズが期待されるうえ、今回生まれる約5000人もの直接雇用を確保しやすいことも決め手となった。

 今年度に立ち上がる、サウジアラビアの拠点との連携など、まだまだ発展の余地もありそうだ。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 佐藤寛久)』
 蚊帳。子供の頃は蚊帳で寝ることが当たり前だったな。



http://sankei.jp.msn.com/economy/business/071206/biz0712060235000-n1.htm
やばいぞ日本】第5部 再生への処方箋(3)「網の目」広げマラリア制圧
2007.12.6 02:35

 かつて生活の必需品だった蚊帳を家庭で見ることはもう、わが国ではほとんどない。だが、日本の代表的な総合化学メーカー、住友化学ではいま、その蚊帳こそが「企業の顔」ともいうべき重要な製品に位置づけられている。

 東京都中央区新川の同社本社を訪れると、少女と蚊帳の写真の巨大パネルが受付に掲げられていた。

 ≪マラリア防圧へ。私たちが開発した防虫蚊帳が、アフリカの子供たちを守っています≫

 ホームページにも、真っ先に「アフリカのマラリア防止」の見出しで≪防虫剤を練り込んだ蚊帳「オリセットネット」を開発し、WHOが推進するキャンペーンに協力しています≫と書かれている。

 同社の大庭成弘専務(64)はオリセットネットについて「100億円強のビジネスなので、住友化学全体からすれば0・5%から0・6%。事業規模は大きくない」という。

 ただし、貢献度は金額だけでは測れない。マラリアは、病原体のマラリア原虫に感染した人の血を吸った蚊が媒介して広がる感染症で、年間3億人が発症し、100万人が死亡する。エイズ結核と並ぶ世界3大感染症であり、アフリカでは子供の死因の1位。住友化学が開発した蚊帳により、そのマラリアの制圧に希望が出てきたのだ。

 「ハエ、カ、ゴキブリなどの駆除は住友化学50年来のビジネス。事業規模は小さいが、いわば本業の分野での社会貢献が企業のブランド価値を高め、社員や家族も会社に誇りを持っている」と大庭専務は強調する。

 半ば忘れられかけていた本業を生かすことが、地球規模の課題に対する貢献につながり、企業全体の士気を大きく高める。その経験はこれからの日本にとっても教訓的である。

 そのオリセットネットの開発者で、同社ベクターコントロール部の伊藤高明・技術普及課長(59)に話を聞いた。

 伊藤さんは1973年に入社した技術者で、夜間操業の工場用に防虫網戸の研究をしていた85年当時、「蚊帳に殺虫剤処理すると蚊の駆除に有効である」とする論文が世界で相次いで発表されたことから、殺虫剤を染みこませた素材で蚊帳を作る研究をこつこつと進めていた。

 当時の殺虫剤処理をした蚊帳は洗うと薬が流れてしまい、半年に1回、殺虫剤溶液に蚊帳を浸し直す再処理作業が必要だった。先進国の援助で大量に蚊帳の提供を受けても再処理費用までは手が回らず、途上国では結局、宝の持ち腐れである。

 一方、工場用の防虫網戸にはポリエチレン樹脂に殺虫剤を練り込み、それを糸にして網戸を作る技術が確立されていた。最低5年は効き目が持続、この間は再処理の必要もない。網戸の技術を転用することで素材の樹脂の売り上げも伸ばせるのではないか。そんな計算もあった。

 だが、ポリエチレン樹脂の蚊帳は、通気性の面でアフリカでは実用に適さない。平たく言えば、暑くて眠れないのだ。伊藤さんは実験と観察を繰り返し、決断した。

 「網の目を広げよう」

 ■「利他の精神」本業を生かす

 殺虫剤を練り込んだオリセットネットの網の目は4ミリ幅。家庭用に使われる一般の蚊帳が2ミリ幅ということだから、面積では4倍の大きさになる。マラリア原虫を媒介するハマダラカは2ミリの穴だと通れないが、4ミリ幅なら通過できる。

 だが、蚊の習性として、網目をすっと通り抜けてはいかない。ネットにぽんぽんと突き当たるように飛んでき、そこに殺虫剤が練り込んであるので蚊帳の中に入る前に落ちていく。実験を重ね、通気性と蚊帳の機能の両方を追求したぎりぎりの選択が4ミリだった。

 住友化学は2000年、世界保健機関(WHO)から(1)オリセットネットの増産(2)アフリカへの技術移転−を依頼された。製品評価の結果、WHOがマラリア対策の有力な武器として認めたからだ。無償の技術移転にも「当時は社内的認知度が低く、ビジネスとしてはゼロに近かったので、貢献してもいいだろうということになった」と伊藤さんは振り返る。

 アフリカではマラリアが治っても、また次の年に蚊に刺され発病する人が多い。貧困がマラリアの流行を促す環境を生み出し、マラリアがさらに貧困の悪化に拍車をかける。

 そうした負の循環が蚊帳によって変わり、米国のNGOのニュースレターではタンザニアの農家の写真が紹介された。荒廃していた裏庭がオリセットネットの支給から1年後には、豊かな作物が実る畑になっていたという。

 「アフリカの蚊の原虫保有率は4%。月に100回蚊にかまれると4回感染する計算です。蚊に刺される機会を減らし、感染する人が減れば、蚊の原虫保有率も下がる」と伊藤さんは説明する。

 オリセットネットの工場は中国とベトナムに各1、タンザニアに2。タンザニアの1カ所は現地企業に技術を供与し、もう1カ所は現地企業と住友化学のジョイントベンチャーだ。原料の殺虫剤を練り込んだ樹脂ペレットは日本で製造し、海外4工場で糸にする。

 その糸を縫製して蚊帳に編む工程に人手がかかるので、住友化学エチオピアなどでも新しい縫製工場の開設準備を進めている。

 タンザニアのアリューシャという町ではオリセットネットの工場が3000人から4000人の雇用を創出し、物流などへの波及効果も大きい。技術供与をきっかけに住友グループ各社でアフリカに小学校を造る社会貢献事業も生まれた。

 「アフリカに行くと、日本への信頼が厚いことを感じる」と大庭専務はいう。

 世界エイズ結核マラリア対策基金(世界基金)の存在も大きい。2000年の九州沖縄サミットで日本は、世界の3大感染症と闘うには途上国に新たな追加的資金の支援が必要だと呼びかけ、2年後に発足。コンセプトは日本が作ったといまも評価される。

 先進国の拠出金が世界基金を通じて途上国の感染症対策に生かされることで、途上国が自力では購入困難だったオリセットネットのマーケットが出現し、住友化学も最小限のビジネスモデルを維持しつつ国際貢献を果たすことができる。

 オリセットネットの年間生産量は3000万張。需要はアフリカだけで8000万張以上。「住友の創業の精神は自利利他、公私一如。企業は自分だけがもうけるのではなく、社会に貢献しなければならない」と大庭専務は話す。

 蚊帳の開発に必要だったのは最先端技術ではない。素材部門と害虫駆除の部門がそれぞれ持っていた技術を横断的に結びつけることで新たな飛躍があった。

 大切なのは必要性をつかむ想像力である。(宮田一雄)』